top of page
koufukujihokutoshi

【11】二回としての「1」

二回の行事を一回分として見なす。こうした事例を民俗行事に見ることができる。

修正会・修二会は正月行事を二度行う。十五夜と十三夜の月見は二度見て願いがかなうという。正月とお盆の二度の行事、晦日(6月)と大晦日(12月)の二回の大祓の行事を行う。一年を二分するように、同じ行事を二度繰り返して一年の行事が完了する。つまり二回して始めて「1」回分としての儀礼的価値を有する。

大宝令(701年)、大祓が六月と十二月の晦日に決められる。平安時代『三代実録』においては、元慶元年四月の条に、「一日一夜。合為一日」とある。昼と夜の二回を、昼・夜合わせて一日と定める。

 一日、一年を二分する対の構図が見られるように、左右対称など二つの事項を統合して、二回を合わせて「1」とする価値観を重視するようになった。それは、日本古来の二分する思考の上に、中国からの暦・易の根源的意味の「太一」に統合されたものである。律令制の左大臣、右大臣の上位に太政大臣が置かれたのと同様である。

正月と盆は、1年に2度営まれた先祖供養の行事であった(正月は魂祭りと称し、先祖を祀る行事であった)。

次の対応関係、共通性を見てみると、一年を二分している行事となっている。このように

二分する思考は、日本人の古くからの伝統思考となっている。

対応関係

1月1日   正月        7月1日 釜蓋朔日=地獄の釜の蓋が開く。

1月6・7日 若菜打ち・七草粥  7月6・7日 

七日盆=盆の食器・女の髪を洗う。

1月14・15日 小正月     7月14・15日 お盆

1月20日    ハツカ正月   7月20日 ハツカ盆

共通性

正月 ― 年棚、門松迎え、トンド・鬼火などの火祭り

お盆 ― 精霊棚、盆花とり、迎え火・送り火・柱松という火焚き行事


閲覧数:12回0件のコメント

最新記事

すべて表示

【17】まとめ

「1」の論理は神仏の領域を示し、あの世的世界とこの世的世界を切り分ける役割を持っている。あの世的精神文化の「1」は民俗儀礼、芸術文化、スポーツ、日常生活など日本文化の隅々まで及んでいる。「1」の持つ精神性は、民俗儀礼における宗教性を高め、芸術文化の美意識を深め、また日常生活...

【16】 悟りとしての「1」

ブッダの悟りとしての一回性についてである。 ブッダは35歳の時、インド東部のビハール州にあるブッダガヤの菩提樹のもとで禅定に入って悟りを開いた。仏典によれば、自分一人だけの唯一絶対の悟りを内面に秘めたままにしておくことを望んだ。梵天はブッタ一人の悟りに終わらせることが忍び難...

【15】 道としての「1」

道として「一」は、老子の「道徳経』に、「道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生じる。万物陰を負いて陽を抱き、沖気を以って和を為す」とある「道は一を生じ」の「一」である。 「一」は根源的意味の太極を意味する。陰陽未分の太極である一気から陰陽二気が生ずる。数の流...

Comments


bottom of page