一年は一回限りで、年月は一回ごとに積み重ねられていく。2年、3年と数えるが、年が二個、三個と増えるのではない。「1」が積み上げられるだけである。年齢も同じである。連続としての「1」の意味である。1年は一回で完結し、次年度とは断絶する。去年と今年は旧年と新年と区別され、別の年である。
一年一回限りの儀礼的なものは来年度に引き継がれない。お札や御守り、正月の縁起物など、一年限りのものはお焚き上げをされる。
儀礼は一回限りで終了する。祭祀儀礼の祭具も一回限りの使用で、終わって破却される。
新たに神を迎えるために一回ごとに取り替えられ、再利用されることはない。
白木の位牌は葬式のみに使用されるもので、四十九日には塗りの位牌に切り替えられる。白木の祭壇や祭具、あるいは祭場を白の布で覆い、さらに葬式に際し床の間、神棚、写真に白い紙を貼ることは、一回限りの葬祭場として使用することを示す。
即位儀礼の大嘗宮の式場建物、産小屋など、使用後は焼却・破却されてきたのも同じ理由からである。地鎮祭は式が終われば片付けられ平地となる。
破却・焼却は、祭場を解体し始末する行為ではなく、破壊そのものが神、魂をあの世に送る儀礼である。正月の飾り物も恵方の方に神送りがなされる。盆行事で川や海に先祖を送るのと同じである。
宗教儀礼に基づき破壊される「1」の論理とは、祭祀儀礼の一回の終了による破却によって魂送りされることである。
諸説あるが、縄文時代の土偶の一部棄損行為も魂送りの儀礼と考えることができる。
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